HV車のシステム最高出力、実はあまり参考にならない⁈ その意味とは?

雑学

ハイブリッド車が人気となり、登録車の大半を占めるようになったことで、

「システム最高出力」という言葉が出てきました。

今回はこの言葉の意味について紹介したいと思います。

システム最高出力とは?

僕もシステム最高出力について調べてみましたが、出てきませんでした(笑)ウィキペディアにも載っていない…

ただ、言えることは、メーカーが算出している値ということです。

つまり、メーカーごとに算出の基準や方法も異なっているので一義でない、ということです。

なぜ、こんなわかりにくい定義なのか、その理由を説明したいと思います。

結論から言うと、システム最高値出力は、シリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステムについて用いられる、トルク、馬力の特性を加味しメーカーが算出した参考値ということになります。

シリーズパラレル方式って何?と思った方のために、ハイブリッドシステムについておさらいしたいと思います。

ハイブリッドのシステムについて

シリーズ・パラレル方式(スプリット方式式)ハイブリッドシステム

エンジン、モーターともに搭載し、それぞれが協働して駆動する方式のことです。

トヨタ プリウスPHV HPより引用

トヨタを例にすると、

写真の左側から2番目の図のとおり、「ハイブリッド走行時」には、「モーターとエンジンを最適な効率で走行」します。

このとき、エンジンは、バッテリーの充電を行ったり、直接駆動(クルマを動かす)したり、あるいは走行をモーターに任せ、停止したり、様々です。

このようにエンジンとモーターが協働して動力を供給するハイブリッドシステムをシリーズ・パラレルハイブリッドシステムと呼ぶことがあります。

自動車業界では、ホンダのハイブリッドシステム(e:HEV、イーエイチイーブイ)もこのシリーズ・パラレル方式として紹介されています。(個人的に、シリーズ式だと思っています)

搭載例

トヨタ THS(ティーエイチエス)、ホンダ e-HEV(イーエイチイーブイ)

シリーズ式ハイブリッドシステム

エンジンで発電し、モーター駆動を行う方式です。

上で紹介したシリーズ・パラレル方式よりもシンプルな構造な上、駆動はモーターのみで行うことから、よりEVに近いハイブリッド車であるといえます。

このタイプの特徴は、電気のみで駆動することからエンジンの存在を感じることなく、至極滑らかな走りを実現している点にあります。

搭載例

日産のe-POWER(イーパワー)、ダイハツe-SMART HYBRID(イースマートハイブリッド)

ノート e-POWER

この方式では、駆動はモーターで行うため、モーターのスペックがそのクルマの性能となります。日産のハイブリッド車の性能を知りたいときは、「モーターのスペック=車の性能」と考えればよいです。

パラレル方式

エンジンが主として駆動します。停車時や発進時にモーターがアシストすることで滑らかな走りを実現し、燃費向上にも貢献します。

搭載例

マツダM Hybrid、日産S-HYBRID(エス・ハイブリッド)、スバルe-BOXER(イーボクサー)、スズキマイルドハイブリッド

この方式では、モーターの出力が極めて小さいので、スペックに換算できるほどの性能はありません。

絶対的な性能は、ガソリンモデルと大差ないと考えましょう。

エンジン・モーターはさぼりがち⁈

シリーズ・パラレル方式では、エンジン、モーターが協働して駆動しますが、それぞれが本気を出すことはありません。

▲写真はアルファードのハイブリッドシステム

エンジン・モーターは2人で力を合わせて、クルマを動かしますから、

どちらかが頑張っているときは、もう一方が休んでしまいます。

なぜなら、それぞれの得意分野が異なるからです。

一方が得意とする領域では、もう一方が休憩をするからこそ、燃費が良くなるのです。

ヤリスを例にスペックについて見てみましょう。

ヤリスのスペック

HV
最高出力67kW(91PS)/5,500r.p.m
最大トルク120N・m(12.2kgf・m)/3,800~4,800r.p.m.
トランスミッション電気式無段変速機
フロント
モーター
最高出力
59kw(80PS)
最大トルク
141N・m(14.4kgf・m)
リア
モーター
最高出力
3.9kw(5.3PS)
最大トルク
52N・m(5.3kgf・m)
システム最高出力85kW(116㎰)

出力に関して以下のようにまとめました。システムの最高出力と、エンジンの最高出力とモーターの最高出力の合計は、同じにはなりません。

最高出力最大トルク
エンジン91PS/5,500r.p.m.120N・m/3,800~4,800r.p.m
フロントモーター・出力80PS141N・m
システム最高出力116PS

最高出力について

エンジンは 5,500r.p.m. で 91PS を発生させます。

対してモーターは、3,000r.p.m.台で最高出力を生じ、それ以降回してもあまり伸びません。

最大トルクについて

エンジンは3,800~4,800r.p.m.

モーターは0‐2,000r.p.m. くらいまでで最大トルクに達します。

エンジン=高速域得意、モーター=低速域得意

ですから、単純にエンジンとモーターの出力を足し合わせたものが、ハイブリッドシステム全体での最高出力になるというわけではありません。

〇〇 L 並みの性能とは どういう意味?

メーカーの宣伝文句としてよくあるのが「〇〇L並みの性能」という言い方です。

これは、モーターのトルクの大きさを前面にアピールしているのだと思われます。

走行用モーターのトルク特性

回りはじめた瞬間から最大トルクを生むモーターの特性を活かし、力強く滑らかな加速を追求。V6 3.0Lエンジン並のトルクと、クラストップの低燃費を両立しました。

ホンダCR-V HPより引用

普段使いでは、トルクが大きい方加速も良いですし、燃費も良くなります。

しかし、高速などでスピードを出すとなると、トルクだけでなく、出力も重要になりますから、

ハイブリッド車での〇〇L並みの性能というのは、

主に、街乗りから高速を制限速度域で走る場合に、実現できる性能だと理解しておきましょう。

まとめ

システム最高出力とは、高回転が得意のエンジンと、低回転が得意なモーターのそれぞれの性能を総合的にみて、このくらいの馬力に相当するだろうとメーカーが算出したのことを指します。

やはり推定値ですから、必ず公表されているものではありませんし、バッテリーの充電状況が悪ければ、最大の出力は出せなくなることもあります。最近公表されなくなった車種もあります。

おそらく、ユーザーの使用状況やバッテリーの劣化や具合によって変動したり、

コンピューターにより制御をおこなうため、プログラムの書き換えによりシステム最高出力も変動する可能性があることなどから、公表を控えている側面もあるのだと思います。

ですから、以下の数値は興味本位で眺めてください。

ハイブリッド システム最高出力 一覧

レクサス
システム最高出力
LS 500h(3.5HV)359PS
GS 450h(3.5HV)/300h(2.5HV)348PS/220PS
ES 300h(2.5HV)218PS
IS 300h(2.5HV)220PS
CT 200h(1.8HV)136PS
RX 450h(3.5HV)313PS
NX 300h(2.5HV)197PS
UX 250h(2.0HV)184PS
トヨタ
システム最高出力
センチュリー(5.0L HV)381PS
カローラ(1.8L HV)122PS
カムリ(2.5L HV)211PS(4WDは210PS)
クラウン
3.5Lハイブリッド(15代目)
359PS
クラウン
2.5Lハイブリッド(15代目)
226PS
初代アクア(1.5L HV)(DAA-NHP10)100PS
2代目アクア(1.5L HV)116PS
ヤリス(1.5L HV)116PS
プリウス(1.8L HV)122PS
C-HR(1.8L HV)122PS
3代目ノアHV(1.8L HV)136PS
4代目ノア/ヴォクシーHV(1.8L HV)140PS
4代目アルファードHV(2.5L HV) E-four197PS
ハリアーHV E-four197PS(現在記載なし)
ハリアーPHV(2022年~)306PS
RAV4218PS[2WD]/222PS[E-four]
ホンダ
ステップワゴンHV(2.0L HV)215PS(現在記載なし)
オデッセイHV記載なし
システム自体は
ステップワゴンと共通